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人工生命・人工知能・ディープラーニング

AI も錯視を起こす

錯視とは視覚に関する錯覚のことで,大きさ,形,色など様々な種類,確認されています.また,脳の仕組みをモデル化したニューラルネットワークを用いて錯視を再現する研究が行われています.錯視を再現することで,学習に使用したモデルの構造や学習方法などから脳のどのような補正や予測が錯視の要因となるかといったヒントを知ることができます.

本研究では,色の恒常性と呼ばれる人間の脳の性質に着目しました.色の恒常性とは,人間は光の影響を補正して物体の色を知覚しているという性質のことです.次に,色の恒常性が原因として考えられている図1に示す「ドレスの色の錯視」と呼ばれる錯視を紹介します.
 

図1 : 「ドレスの色の錯視」を起こす画像

「ドレスの色の錯視」とは,人によって「青と黒のドレス」,「白と金のドレス」の主に2つの見え方があると言われている錯視のことです.「ドレスの色の錯視」の画像を見たときに人によって色の恒常性による補正方法が異なるために,2つの見え方が存在していると考えることができます.

本研究では,「ドレスの色の錯視」と呼ばれる錯視の再現を行うことで,2つの見え方がどのような補正方法で見えるかを明らかにすることを目的としています.輝度と色味の補正がそれぞれの見え方につながるという考えの下で,輝度や色味を変換した画像の補正を,ニューラルネットワークを用いたモデルに学習させるという実験を行いました. 

実験の概要を図2に示します.
 

図2 : 実験概要

再現がうまくいっているかどうかを調べるために,学習を終えたモデルに対して「ドレスの色の錯視」の画像を入力した結果と,人間のドレスの見え方を調べた先行研究との比較を行いました.
 
青と白に見える領域(領域A)と黒と金に見える領域(領域B)におけるLab色空間での比較結果が図3,図4になります.
 

図3 : 輝度変換した画像を補正する学習での比較結果(O : オリジナル画像,BB : 「青色と黒色の見え方」,WG : 「白色と金色」,M : モデルの出力)

図4 : 色味変換した画像を補正する学習での比較結果(O : オリジナル画像,BB : 「青色と黒色の見え方」,WG : 「白色と金色」,M : モデルの出力)

輝度を変換した画像の補正を学習させた場合は,「青と黒のドレス」に見える人の見え方に近づき,色味を変換した画像の補正を学習させた場合は,「白と金のドレス」に見える人の見え方に近づくことを示しました.