カーリング

カーリングはオリンピックの正式種目であり,世界中で注目を集めているスポーツです.このスポーツでは,相手のストーンをはじき出しつつ,自分のストーンをできるだけハウス(と呼ばれる円盤)の中央に近づけていきます.その際「どこにストーンを投球するべきか」という点で非常に高い戦略性が存在し「氷上のチェス」とも称されています.ところが,これまで戦略に関する科学的な研究はあまりされてきませんでした.
 
近年,電気通信大学の伊藤毅先生のグループが,カーリングの戦略をコンピュータにより解析するためにデジタルカーリングというコンピュータゲームを開発しました.このゲームは人間またはAIがプレイヤとなり,2人で対戦を行います.AIは,現在の局面(盤面状態)に対し,次の投球をどのように行うか(投球情報)を出力するプログラムのことを指します.このデジタルカーリングにおいて強いAIを開発することができれば,現実世界におけるカーリングの戦略考案への貢献が期待できます.
 

 
われわれは,このデジタルカーリングをプレイするAI「じりつくん」の開発・改良を行っています.じりつくんでは,盤面状態を局面,候補手をエッジとして最良手の探索に「ゲーム木探索」と呼ばれる手法を用いています.ただし,ゲーム木探索はこれまで将棋や囲碁などのボードゲームで用いられている手法であり,デジタルカーリングへの適用にあたっては解決しなければならない課題が2点あります.一つ目は「候補手である投球情報には実数値が含まれるため無数に存在する」という点,二つ目は「デジタルカーリングではAIの出力した手(投球情報)に乱数が加わるため,生じうる局面が不確定である」という点です.
 
図1 (1)
 
じりつくんにおいては,これらの課題を解決するために,まず盤面全体に格子状に細かく離散化した座標を設定し,その座標を投球の目標座標として有限個の候補手を生成することで一つ目の課題を解決します.
 
二つ目の課題に関しては,まず生じうる局面を「狙った座標から一定半径内の座標にズレた場合に生じる局面」に限定し,候補手の評価を生じうる複数の局面のから求められる評価値の期待値により候補手の評価を行っています.
 
図2 (1)
 

 
これまで,デジタルカーリングにおける公式大会は二回行われており,一回目は準優勝,二回目は優勝しています.