運動の相互知覚を通したコミュニケーションの進化

コミュニケーションは生物の意思疎通に不可欠なものです.一般的には声や言語を用いたものが挙げられます.コミュニケーションがどのように進化していったかを考えた際に,はじめから言語のようなコミュニケーションのための機能が備えられていたと考えるのは難しく,その起源は運動であったと考えられています.はじめは意味のなかった運動が徐々に個体間で意味のあるものとして進化していき,コミュニケーションとして成立したと考えられています.

我々の研究では,運動のみを用いてコミュニケーションが創発するかということをコンピュータシミュレーションによって明らかにし,それが我々の行うコミュニケーションに近いものとなっているかを検証しています.
運動のみからコミュニケーションを行うために,下図のような他の個体までの距離がわかるセンサと車輪のみから構成されるロボットを用います.ロボットはリカレントニューラルネットワークによって制御されセンサから感知した他のロボットの動きに基づいて行動を行います.3体のロボットは「お互いに離れずに一定距離以上進む」というタスクが課され,それを達成できるように遺伝的アルゴリズムによって進化していきます.3体がまとまって進む方向は決まっていないので,コミュニケーションを行なって進行方向を決定しなければならないタスクになっています.
 

下の動画の左側は進化後の振る舞いを示しています.
 


 
3体は序盤で進行方向を決定するためのコミュニケーションを行い,その後決まった方向にまとまって進む様子が見られます.試行ごとに進行方向が変化しているため,方向はあらかじめ決められたものではなく,コミュニケーションによって決定していることがわかります.動画の右側は各ロボットが運んだ情報量を可視化しており,コミュニケーションを行なっている期間は流れる情報が多いことが示されています.